脳からみた自閉症 「障害」と「個性」のあいだ
とても読みやすいです。理由は原因と結果が書かれているからです。
まだ研究中のことも多く、わからないことがたくさんある発達障害ですが、自閉症になる可能性が生まれる過程や、育て方が原因ではないと繰り返し説明してくれることは、実際に自閉症に悩む人々の気持ちに寄り添ってくれると感じました。
専門用語を変に置き換えずにそのまま使用して説明してくれるので頭に入ってきやすいですし、妊娠中がいかに脳にとって大事かや、生まれてからも支援によっては社会が要請するようなコミュニケーションに近づけるかもしれないといった、希望も感じられるような現実は現実として提示し、だけど人には心という恐らく脳が創り出す生きていくうえで欠かせない機能についても知れたような気がして一気に読んでしまいました。
自閉症の特徴は、「社会性の異常」「コミュニケーションの障害」「常同行動」の『三つ組のコア症状』と呼ばれています。
そして人によっては精神遅滞や睡眠障害、感覚異常(過敏もしくは鈍麻)などを合併します。
このように様々な症状を併せ持っている状態のことを自閉症と呼ぶのであり、自閉症という特定の障害があるわけではありません。
また、他の主となる病に自閉症を併せ持つ場合もあって、とても本人ひとりでは生きていけないくらいのハンデです(軽重の差はありますが)。
本書で特に注目したのは、脳がどのように「発生発達」(意味はぜひ本書で確認してください)していくのか、そのプロセスをイラスト入りで詳しく解説している点です。
受精し二日後からの様子を細かく文章とイラストでわかりやすく説明してくれる一般向けの本に初めて出会えたので新鮮でした(だから専門書があるのですが、当事者家族=素人であることが想定されるため本書の意義は大きいとボクは思います)。
発達障害に悩むときって問題行動やコミュニケーションに困難さを抱えることが多いですから、家族はつい気が滅入って責めたり怒りの向どころに困ることも多いかと思います。
その気持ちには、なぜこうなってしまうのか??という原因不明の苛立たしさがあると思うので、少しでも事の成り立ちが知れたら自分の気持ちの置き所になるんじゃないかとも思います。
本書は熱くなりすぎず冷たすぎず、でも著者の現実を踏まえた自閉症をよくしようという情熱がありありと感じられました。
アスペかも?と悩まれている方にオススメです。イラストや写真もふんだんに使われ、生きている脳のなかで何が起こっているのかその可能性が垣間見れる良書だと思います。
脳からみた自閉症 「障害」と「個性」のあいだ 大隅典子 著/2016年刊/講談社ブルーバックス/254ページ/1,000円+税
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