本書は、中学生の事例をたくさん紹介して、中高生に向けたわかりやすい内容です。
サバイバル・リカバリーガイドブックに仕上がっている良書で、専門書にありがちな上から目線のアドバイスじゃないです。
今まで「は?で、なんなの?」と買わなきゃよかったと後悔してた人にはオススメです(笑)
依存症は次の3つに分けられます。
物資/行為/関係
摂食障害と自傷行為も大きくみれば含まれるのかもしれません。
当事者の苦しみを筆者は「依存症は人に依存できない病であり、人とのつながりを取り戻すことが必要だ」と説きます。
なぜ病になるまで止められないのかを周りが知り、『困っている』気持ちに寄り添っていかないと、その苦しみが癒て自立することは難しいです。
子どもさんが、ひとり部屋で悩みを誰にも打ち明けられないでいるとしたら、大人のあなたは何をしてあげられますか?
悩みとは勉強、友だち、性、夢、趣味、スポーツ、食べること、遊びと様々あります。
大人からみると「え、そんなことで悩むの?」ということで悩むのが子ども。ボクもあなたも子どものころ同様に悩んだはずで、今は見聞したからわかるのであって、発展途上の子は不安に感じやすいものです。
依存症にはドーパミン問題があるのですが、健全な家庭環境で親からもらえる温かいかかわりで「いつも同じ・一定な」愛情が、その子の脳にドーパミンという報酬を与え自己肯定感を育みます。
ところが健全ではない場合、エナジードリンクやゲーム(インターネット系)、食べ吐きや自傷をして、無自覚に自ら報酬をつくり出そうとしてしまう可能性が高くなります。子どもは不安や焦りから逃れたくて、たとえ一時であっても「ほっと」したいんです。安心したいのです。
本書では依存症になってしまう過程が事例でわかりやすく説明されているので、親子のかかわり方を見直す一助になります。
依存することが病と認められた歴史や、少し脳についての解説もあるので、精神論だけではなく行動ベースで改善していくにはどうすれば良いのか大人も参考になります。
ボクが印象的だったのは、「否定される関係」「支配される関係」「本当のことをいえない関係」という3分類に依存症の根っこを考えている点です。
中学生くらいから一般には自我が芽生え始めますが、それと同時に集団生活や目標達成すること、身体の変化や性、人間関係についても学び体験し始めます。
この時期につまずくと悩みや苦しみは長期化しやすく、人間関係が歪みやすくなると考えられます。いじめや引きこもりを例に出すまでもなく、集団のなかにあっても孤立している子が常態化している今なのではないでしょうか?
依存症になる前に、地域で理解して取り組むことが当たり前の社会になってほしいし、誰でも依存症になる可能性があるということを知っておいても損はないと思います(性別、年齢、学歴、家庭環境の差はない)。
最後にボクは人間味のある著者さんの考え方や経歴に共感しました。カッコつけないで同じ目線に立とうとしてくれる精神科医の先生なんだなって嬉しくなり「ほっと」しました(笑)
「世界一やさしい依存症入門 やめられないのは誰かのせい?」松本俊彦著/2021年刊/河出書房新社/232ページ/1,420円+税
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